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2026年1月「通常国会冒頭解散」説:地方自治体の予算編成と選挙事務を襲う「最悪のシナリオ」とは?

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【この記事で分かること】

  • 予算編成の最終盤を直撃する「1月解散」の実務的インパクトと危機的状況
  • 国の暫定予算が地方自治体の「資金繰り」と「財源確定(交付税)」に及ぼす具体的なリスク
  • 税制改正関連法案などの成立遅れが招く、新年度当初の窓口・賦課実務の「制度的空白」
  • 全庁的な選挙事務従事が引き起こす、予算編成や重要施策の「連鎖的遅延」シナリオ

2026年1月10日、全国の地方公務員、特に財政課と選挙管理委員会の担当者に激震が走りました。

高市内閣総理大臣が23日召集の通常国会冒頭での衆議院解散を検討しているという報道

そして総務省からの「至急の連絡」……。

三連休の初日にこのニュースを聞いた皆さんの心境、痛いほどよく分かります。

「よりによって、なぜ1月なのか」 「予算編成の最終盤に、選挙事務が重なるなんて……」

全国の財政課長の皆さんは、きっと、この一報を聞いた瞬間に手に持っていたコーヒーを置き、すぐに部下の顔を思い浮かべて、頭の中で令和8年度予算のスケジュールを秒単位で組み直したことでしょう。

政治の世界では「常在戦場」と言われますが、自治体の実務の世界、特に予算編成における1月は「聖域」とも呼べるほど過酷で繊細な時期です。このタイミングでの解散が、単なる「忙しさ」を超えて、いかに自治体経営の根幹を揺るがすリスクを秘めているのか。

元財政課長としての経験、そして総務省で地方行政を統括する実務の裏側を見てきた視点から、私たちが今直面している事態の「本当の恐ろしさ」を整理してお伝えします。

さゆり

せっかく穏やかに年始を迎えたのに、こんなことになるなんて…大変ですよね。

目次

2026年1月、衆議院解散の可能性:総務省の「至急連絡」が意味するもの

今回の解散報道がこれまでの「解散風」と決定的に違うのは、

報道の翌日に総務省自治行政局選挙部から都道府県選管に対し、「衆院選の事務準備を進めるよう」との異例の通知が出された

という点にあります。

これは、国が単なる検討段階を超えて、具体的な執行準備に入ったことを示唆しています。

ねこ

その通知は、これだにゃ。

さゆり

令和8年1月10日付け総務省自治行政局選挙部管理課事務連絡「衆議院の解散に伴う総選挙の執行について」という文書ですね。

召集冒頭解散という「スピード感」

報道によれば、1月23日の通常国会召集と同時に解散し、2月上旬にも投開票を行うという、極めてタイトなスケジュールが浮上しています。

通常、解散から投開票までは少なくとも2週間以上の準備期間がありますが、冒頭解散となると、実務に与えられる猶予はほとんどありません。

財政課と選管を襲うダブルパンチ

今回の解散が地方自治体にとって「最悪」と言われる理由は、そのタイミングに集約されます。

例年、1月は当初予算の事務方作成案を首長に提出し、いわゆる「首長査定」に入ります。主要事業や金額の大きい事業を中心に首長の査定を受けながら、地方財政対策や総務省財政課事務連絡(いわゆる「財政課長内かん」)、総務省交付税課の予算積算資料などを見て予算の最終集計を行い、2月の議会に提出する予算書を印刷に回す「デッドヒート」の時期です。

そんな大事な時期に、自治体の全組織を挙げて対応しなければならない国政選挙が覆いかぶさってくる。

これは単に「仕事が増える」というレベルの話ではありません。自治体の資源(予算・人員・時間)が限界を超え、制度上の破綻すら招きかねない異常事態なのです。

1月に衆議院が解散すると地方自治体はどうなる?実務を襲う「4つの壁」

通常国会冒頭での解散、そして2月上旬の投開票。このスケジュールが現実のものとなれば、地方自治体の現場は、単なる「繁忙期の重なり」では済まされない事態に陥ります。

具体的にどのような「壁」が私たちの前に立ちはだかるのか。実務的な視点から、その致命的なポイントを紐解いていきます。

地方は予算編成の「1丁目1番地」:修正不能なタイミングでの激震

自治体のカレンダーにおいて、1月中旬から下旬は、当初予算案を仕上げる、最もデリケートな時期です。

通常、この時期は首長査定の時期であり、主要な施策の見直しや財源充当が終わり、財政課では「予算書」という分厚い冊子の作成(印刷)に向けたカウントダウンが始まっています。

私の経験上、1月中旬というのは、財政課にとって「最終確認」の時期です。そこに、国の政治状況による「前提条件の大幅な変更」が突きつけられる。

これは、

完成間近の精密なパズルを、最後の数ピースをはめる直前にひっくり返されるようなもの

です。

国の当初予算案が閣議決定されている時期なので、大きな変更はないかもしれませんが、もし国の動きによって「国の政策の方向性」が変われば、もはや予算を作り直す時間的猶予はありません。

そんなことになってしまえば、当初予算を6月議会で大幅に補正する…のような事態も想像しなければなりません。

国が暫定予算になると、地方は「羅針盤」を失う

最大の懸念は、国会が解散・総選挙に突入することで、

国の令和8年度本予算の成立が大幅に遅れ、「暫定予算」になる可能性

です。

国が暫定予算を編成することになれば、「国の裁量がある、地方向けの補助金等」は執行ができなくなってしまいます。

また、国の予算や予算関連法案が通らないまま4月を迎えることになれば、たとえば本来4月に交付されるはずの普通交付税が、もともと想定していた金額で交付できない、という事態が起こり得ます。

さゆり

そういえば昔、地方交付税法を4月1日までに通せなくて、4月の概算交付の金額が変になったことがありましたね。

予算関連法案が4月1日に間に合わない:税制改正の空白期間

さらに深刻なのが、「地方税法」をはじめとする予算関連法案の行方です。

通常、税制改正は4月1日の施行を目指して年度末に成立します。しかし、選挙によって国会が空転すれば、この法案成立が4月1日を過ぎてしまう可能性があります。

かつて暫定税率を巡って「ガソリン価格の混乱」が起きたように、税制の根拠法が空白期間を迎えることは、自治体の賦課徴収実務に大混乱をもたらします。

「新年度から適用されるはずの減税措置ができない」「逆に、徴収すべき税の根拠が固まらない」 この実務上の責任を最前線で負わされるのは、いつも現場の窓口職員です。

根回しも説明も不十分なまま、制度の「不備」の釈明に追われる姿が、今から目に浮かびます。

ねこ

国の人たちは、ここに思いが及ばないから困ったものなのにゃ。

突然の選挙事務従事:全庁体制という名の「実務停止」

そして、最も直接的な物理的ダメージが、全庁を挙げた「選挙事務」への動員です。

2月上旬の投開票となれば、1月下旬から期日前投票所が設置され、自治体の全所属から職員が駆り出されます。

通常、選挙事務は「全庁一丸となって」と言われますが、この時期は前述の通り、各部署が新年度予算の事業概要を詰め、議会説明資料を作成し、さらに今年度の2・3月補正予算を仕上げるピーク時です。

また、予算だけでなく、この時期は人事に関する事務がピークになる時期でもありますし、税務部門では先述の税制改正対応のほか、当初課税に向けて税務署と連携して申告受付をする時期でもあります。

「財政課や選管だけが頑張ればいい」という話ではありません。 事業部署のキーマンが期日前投票所の管理者として丸数日間不在にする。予算担当者が不在のまま、財政課からのヒアリング対応が遅れる。

この「連鎖的な遅延」が、結果として予算編成の質を落とし、最悪の場合、議会への提出遅れという自治体史上最悪の事態を引き起こすトリガーになるのです。

さゆり

こういう局面にぶつかると、公務員の人たちは、『でも、自分にはここしかない』と思ってしまいがち。でも、いざという時の『外の選択肢』を知るだけで、今の仕事はぐっと楽になりますよ。ちょっとだけ、寄り道してみませんか?

まとめ:嵐の1月を生き抜く、公務員の「覚悟」と「リスクマネジメント」

2026年1月、通常国会の冒頭解散。これが現実になれば、全国の役所にとって「過去に例を見ないほど過酷な年度末」になることは間違いありません。

予算編成の最終調整、2・3月補正予算の仕上げ、そして国政選挙の執行。これらすべてを、限られた人員と時間で完遂しなければならないからです。

最後に、この未曾有の事態を前に、現場の皆さんが今、心に留めておくべき「実務の要諦」を3つのポイントでまとめます。

1. 「暫定」を想定した、二段構えのロジックを持つ

国の予算が暫定予算になれば、地方交付税や国庫補助金の「確定値」が出るのは大幅に遅れます。

私が財政課長だったなら、この時点で「本予算が遅れた場合の影響額」を試算し、市長や幹部、そして各課の予算担当者に周知します。

具体的には、「当初予算案は今の算定基準で進めるが、国の法案成立が4月以降にずれ込んだ場合の資金繰り計画(一時借入金の検討など)」を、水面下で準備し始めます。

「国が決まっていないから分かりません」ではなく、「国がこうなった場合は、こう動く」という二段構えのシナリオを準備しておく。これこそが、組織を混乱させない財政担当者の「腕」です。

2. 選挙事務は「全庁的な優先順位」の再定義

選挙事務への動員で、予算関係の部署や、重要な継続事業を抱える部署の職員が不足するのは避けられません。

ここで重要なのは、組織全体での「仕事の引き算」です。 「選挙があるから残業でカバーしろ」という根性論は、もはや通用しません。

予算編成という「絶対に落とせない仕事」を守るために、この期間だけは急ぎではない内部事務や研修、不要不急の会議を徹底的に中止・延期するよう、総務部や財政部が旗を振るべきです。

「何をやらないか」を明確にすること。それが、最前線で戦う職員のメンタルと実務の質を守る唯一の手段です。

3. 「常在戦場」をキャリアの糧にする

若手・中堅の皆さんにとって、この1月からの数ヶ月は、公務員人生の中でも記憶に残る「修羅場」になるでしょう。

しかし、政治のダイナミズムが行政実務にこれほどダイレクトに、かつ劇的に影響を与える場面に立ち会えることは、滅多にありません。

「なぜ、国の政治が止まると地方の窓口が困るのか」 「暫定予算という制度が、どれほど現場の裁量を奪うのか」

これらを肌で感じることは、教科書を100回読むよりも深く、日本の統治機構、そして日本の民主主義制度を理解することに繋がります

私が総務省にいた頃も、制度を作る側は現場の混乱を想像して頭を抱えていました。そして今、その混乱の真っ只中にいる皆さんが、知恵を絞って行政を止めない努力をすること。それ自体が、究極の「公務員の専門性」の証明です。

おわりに

1月の解散風は、確かに冷たく、厳しいものです。 しかし、どんなに国会が紛糾し、選挙戦が激化しようとも、住民の明日の暮らしを支える「予算」を止めるわけにはいきません。

予算編成のラストスパート、そして突発的な選挙事務。 目の前の膨大なタスクに押しつぶされそうになったら、どうか思い出してください。 あなたのデスクで今叩いているその数字が、4月からの町の「安心」を形作っていることを。

ねこと一緒に、私も画面のこちら側から、皆さんの奮闘を全力で応援しています。 この冬を乗り越えた先には、きっと一回り大きくなった「公務員としての自分」が待っているはずです。

さゆり

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この記事を書いた人

20年以上にわたり、市役所・県庁、そして総務省といった「地方自治」の最前線でキャリアを積んだ元地方公務員。自治体経営の要である「財政課長」として、「現場に寄り添う予算査定」をポリシーに、数多くの予算編成や行財政改革を完遂。議会からも厚い信頼を寄せられた実績を持つ。

組織の意思決定の舞台裏で培った「公務員のリアルな実務」と、激務の中で見出した「キャリア構築の知恵」を余すことなく公開。難解な制度や、複雑な職場の人間関係といった壁に直面する現役職員へ、元財政課長の視点から忖度なしの具体的解決策を提示します。

天然キャラながら時に核心を突く相棒「ねこ」とともに、地方自治体の世界を分かりやすく解剖。若手公務員の成長と、組織に埋もれない「賢い生き残り戦略」を全力でサポートします。

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