
【この記事で分かること】
- 夏季休暇の法的ルールと性質: 民間の一斉休暇とは異なり、公務員は「期間内に分散して取得する」特別休暇であるという基本的な仕組み。
- 国家公務員と地方公務員の「日数格差」: 人事院規則で一律3日間の国家公務員に対し、地方公務員は条例によって「3日〜5日」以上の幅があるという実態。
- 「自治体格差」が生まれる背景: 人事当局の「採用戦略」や、近隣自治体との均衡、そして財政事情が休暇日数にどう影響しているかという裏側。
- 休暇価値を最大化する戦略的過ごし方: 有給休暇を繋げて「9連休」を作るための事務的な根回し術と、資産運用などの自己投資に時間を充てる重要性。
梅雨が明けるか明けないかという時期になると、役所の廊下でも「今年の夏休み、どうする?」といった会話がちらほら聞こえ始めます。
一般企業にお勤めの方からは、「公務員は休みが多くていいよね」「お盆は役所も休みでしょ?」なんて言われることもありますが、現役の皆さんは苦笑いするしかありませんよね。
ご存じの通り、役所に「お盆休み」という一斉休業日は存在しません。住民サービスを止めるわけにはいかないからです。
その代わりに付与されるのが「夏季休暇」という名の特別休暇です。
実はこの夏休み、私たちが「公務員」という一つの括りで考えている以上に、国家公務員と地方公務員、さらには自治体間でも、その日数や運用に驚くほどの「格差」があることをご存じでしょうか。
財政課長として職員の給与費や福利厚生のコストを精査し、時には人事当局と「近隣自治体とのバランス」について議論してきた経験から言うと、この夏休みの設定一つに、その自治体の「組織としての姿勢」や「苦悩」が透けて見えます。
今回は、意外と語られない公務員の夏休み事情を解剖しながら、元財政課長ならではの視点で、賢く、そして戦略的に休みを使いこなすためのヒントをお話しします。
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公務員の「夏休み」は一斉じゃない?
まず大前提として整理しておきたいのが、公務員の夏休みの法的性格です。
カレンダー通りに休みがくる年末年始休暇(12月29日〜1月3日)とは異なり、夏休みは「夏季における特別休暇」という扱いになります。つまり、「この期間内のどこかで、業務に支障のない範囲で指定して休んでね」という、いわば「分散取得」が基本のスタイルです。
私がいた市役所でも、7月に入ると庶務担当が「夏季休暇取得計画表」を回していました。お盆付近に集中しないよう、課内の「根回し」が始まるのは、公務員にとっての夏の風物詩とも言えますね。
国家公務員は「3日間」の固定制
「公務員なんだから、全国どこでも夏休みは同じはず」と思われがちですが、まずは基準となる国家公務員のルールを見てみましょう。
人事院勧告に基づく「3日間」
国家公務員の夏季休暇は、原則として7月から9月までの間に「3日間」と定められています。これは人事院規則に基づき、全国一律で適用されるルールです。



えっ、たった3日!? 民間企業のお盆休みより短い気がするにゃ…
「3日」をどう膨らませるかという文化
国家公務員の場合、
この「3日間」の特別休暇に、土日や年次有給休暇(年休)を巧みに組み合わせるのが伝統的なスタイル
です。 例えば、水・木・金の3日間に夏休みを当てて、前後の土日を繋げば5連休。さらに月・火に年休を差し込めば、一気に9連休が完成します。
むしろ、「制度としての休みは最小限にするけれど、年休をしっかり消化して大型連休を作りなさい」というメッセージが、人事院の運用からは読み取れます。霞が関のような激務の現場では、この「3日間」というコンパクトさが、逆に業務の穴を開けすぎない絶妙なバランスだったりもするのです。
地方公務員の夏休みは「自治体格差」が激しい
同じ「公務員」という看板を掲げていても、隣の市役所に勤める学生時代の同級生と飲みに行ったら「えっ、お前のところそんなに夏休みあるの?」と驚愕する……そんな光景は、役所界隈では決して珍しくありません。
「3日」と「5日」の壁
多くの自治体が国家公務員の「3日間」に準じていますが、政令指定都市や財政力のある都市部、あるいは人材確保に力を入れている自治体では、「5日間」の設定にしているケースが目立ちます。
この「2日」の差は、現場の職員にとっては死活問題です。土日と繋げた際の「大型連休としての完成度」がまるで違ってくるからです。
さらに、一部の自治体では「お盆期間に限定」という厳しい運用もあれば、6月から10月までの長いスパンで「いつでも好きな時に取っていいよ」という非常に柔軟な運用まで、そのバリエーションは実に豊かです。
「近隣自治体との均衡」という呪縛
なぜこれほど日数がバラバラなのか。そこには人事担当者の、非常に泥臭い苦悩があります。
人事課のデスクには、毎年必ず「近隣自治体の勤務条件一覧表」という資料が置かれています。隣のA市が夏休みを増やせば、自席の電話が鳴り、「うちは増やさないのか」と組合から突き上げられる。逆に、財政課からは「人件費の裏付けはどうするんだ」と詰められる……。



え、なんで夏季休暇の増で財政課に相談するのかにゃ?勤務条件のことなら人事課で専決できると思うのにゃん…



休暇が増えると、業務に穴が開くので、そこの埋め方ですよね。たとえば会計年度任用職員を増やすとか、あるいは超過勤務が増えるとかとなると、財政への影響もでるでしょ?
私が県庁や市役所で予算編成に関わっていた時、人事課長からよくこんな相談を受けました。
『さゆり課長、隣のB市が今年から夏休みを5日に拡充したんです。うちが3日のままだと、来年の採用試験で確実に優秀な学生を奪われます。なんとか予算化させてください!』
実は、
なんです。優秀な若手ほど、ワークライフバランスをシビアに見ていますから。財政課としては渋い顔をしつつも、『人材確保というインフラ投資』として、どうにか理屈をつけて認めたこともありましたね。
休暇日数の裏には、そんな自治体間の生き残りをかけた『仁義なき戦い』が隠れているんです。



そういえば、一時は「地方公務員の人事給与制度は国家公務員基準に合わせるべき」とか言われてましたが、最近は言われなくなりましたね…
夏季休暇を「戦略的」に使いこなす公務員の共通点
仕事ができる職員ほど、実は休むのも上手です。彼らが共通して実践している、休暇の価値を最大化する戦略を共有します。
有給との「コネクト」で9連休以上を創出する
夏季休暇が3日であれ5日であれ、それを単体で使うのは「初心者」です。上級者は、これに年次有給休暇(年休)を「コネクト」させます。
例えば、水・木・金を夏季休暇にし、月・火に年休をぶつける。これで前後の土日を含めて「9連休」の完成です。
「そんなに長く休んだら、デスクが書類の山になるのでは……」と不安になるかもしれませんが、ここが腕の見せ所。「7月中に、自分が不在の間でも誰がどう動くべきかの簡易マニュアル(引継ぎ書)を作り、副課長や隣の席の同僚に共有しておく」。このひと手間の「根回し」があるだけで、休み中の電話は劇的に減り、復帰後の事務処理もスムーズになります。
資産運用と自己投資の「棚卸し」に充てる
夏休みの数日間、あえて役所の事務から完全に脳を切り離し、自分の人生の「決算」を行う時間を確保しましょう。
「資産の研究室」を運営する私からの提案は、このまとまった時間を使って「投資ポートフォリオの再点検」を行うことです。 日々の業務に追われていると、新NISAの積立設定を放置していたり、手数料の高い古い商品をそのままにしていたりしがちです。
クーラーの効いた涼しい部屋で、ゆっくりと自分の資産と向き合う。この数時間が、将来的に役所の給料数ヶ月分の価値を生むことも、決して大げさな話ではありません。


【まとめ】休むことも「公務」のうち
窓口で住民の厳しい声にさらされ、山積みの起案をこなし、常に「公務員としての品位」を求められる日常。
そんな激務を乗り越えるには、意識的に「オフ」のスイッチを入れる勇気が必要です。「自分が休んだら周りに迷惑がかかる」と考えるのではなく、「最高のパフォーマンスを出すために、今、最高の休息を取るのだ」と、プロとしてのプライドを持って休んでください。
休み明け、リフレッシュしたあなたが笑顔でデスクに座ること。それ自体が、住民への最大の貢献になるのです。
財政課長としてこれまで数多くの予算書をめくってきましたが、あなたの人生という最も大切な「予算」を決めるのは、組織ではなく、あなた自身に他なりません。
夏季休暇という制度は、国や自治体があなたに贈った「自分自身を取り戻すための時間」です。そこに罪悪感を抱く必要はありません。
たとえあなたが数日いなくても、役所という組織は回るようにできています。しかし、あなたの人生という物語において、主役を務められるのは世界中であなた一人しかいないのです。誰に遠慮することなく、思い切り夏を楽しんで、英気を養ってきてくださいね。






