「公務員は退職金が多いから老後は安心」——そう言われてきた時代が、静かに終わりを告げています。
総務省が2026年3月に公表した「令和7年地方公務員給与実態調査」によれば、47都道府県の退職手当(定年時・全職種平均)は約2,218万円。民間企業の約1,896万円(厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」)と比べれば300万円以上高い水準ではあります。
でも、私が伝えたいのはその先の話です。
10年前と比べると、47都道府県すべてで退職金が下がっています。しかも、減り幅は都道府県によって大きく異なる。自分がどこにいるかによって、退職時の手取りはまったく違う計算になるのです。
財政課長として予算査定の現場に立ってきた私は、退職手当は財政状況や人件費見直しの影響を受けやすい項目の一つだという現実を、何度も目にしてきました。それは遠い自治体の話ではなく、どこの職場でも起こりうることです。
この記事では、令和7年調査のデータをもとに退職金の実態をお伝えしながら、「今から何をすべきか」を考えます。
10年で全都道府県が下落——その実態
令和7年調査(2025年度実績)と、10年前の平成27年調査(2015年度実績)を比較すると、47都道府県すべてで定年退職金が減少していました。
下落率が最も高かったのは和歌山県(▲16.23%)。2015年には全国5位(約2,406万円)だった水準が、2025年には約2,016万円と全国最下位に転落しています。400万円近い減少です。
続く2位は神奈川県(▲9.10%)、3位に兵庫県・山口県(▲8.9%)が並びます。関西圏では大阪府(▲8.10%)も7位にランクイン。中国地方も島根県(▲8.20%)、岡山県(▲7.90%)、鳥取県(▲7.50%)が上位に並びました。
大都市圏も例外ではありません。東京都は▲7.20%(10位)、2025年時点の支給額は約2,155万円と全国44位。神奈川県は約2,157万円で全国42位です。今回の集計では、東京都や神奈川県でも比較的大きな下落が確認されました。
一方で、下落率が比較的小さかった県もあります。もともとの水準が低かった地域では、そもそも削る余地が少なかったという側面もあるため、単純に「恵まれている」とは言い切れません。
📊 データ出典
総務省「令和7年地方公務員給与実態調査」(2026年3月公表)/「平成27年地方公務員給与実態調査」(2016年5月公表)を基に筆者作成。数値は全職種(一般行政職・教育職・警察職等)平均・定年退職時の退職手当額。増減率=(2025年支給額÷2015年支給額−1)×100で算出。職種や勤続年数によって実際の支給額は異なります。
📊 定年退職金 下落率ランキング上位12都道府県(全職種平均)
| 順位 | 都道府県 | 2015年退職金 | 2025年退職金 | 下落率 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 和歌山県 | 約2,406万円 | 約2,016万円 | ▲16.23% |
| 2位 | 神奈川県 | 約2,373万円 | 約2,157万円 | ▲9.10% |
| 3位 | 兵庫県 | 約2,497万円 | 約2,274万円 | ▲8.9% |
| 3位 | 山口県 | 約2,456万円 | 約2,238万円 | ▲8.9% |
| 5位 | 島根県 | 約2,398万円 | 約2,202万円 | ▲8.20% |
| 6位 | 大阪府 | 約2,342万円 | 約2,152万円 | ▲8.10% |
| 7位 | 岡山県 | 約2,466万円 | 約2,271万円 | ▲7.90% |
| 8位 | 鳥取県 | 約2,331万円 | 約2,157万円 | ▲7.50% |
| 9位 | 東京都 | 約2,322万円 | 約2,154万円 | ▲7.20% |
| 10位 | 秋田県 | 約2,389万円 | 約2,228万円 | ▲6.76% |
| 11位 | 広島県 | 約2,383万円 | 約2,224万円 | ▲6.70% |
| 12位 | 愛知県 | 約2,387万円 | 約2,239万円 | ▲6.20% |
出典:総務省「令和7年地方公務員給与実態調査」(2026年3月公表)、同「平成27年地方公務員給与実態調査」(2016年5月公表)を基に筆者作成。全職種平均・定年退職者等の平均支給額。2025年額は令和7年調査一次データより。2015年額は和歌山県・兵庫県・秋田県が調査報告値、その他は令和7年支給額と下落率(小数第1位)から逆算(誤差±数万円程度)。増減率=(2025年支給額÷2015年支給額−1)×100。
「それでも公務員は恵まれている」——その認識が危ない
財政課にいた頃、退職手当の見直し議論は静かに、しかし確実に進んでいました。表立って騒がれることはない。でも予算査定のたびに、人件費の圧縮が議題に上がる。退職手当はその筆頭でした。
「民間より高いから削っても問題ない」というロジックは、財政当局にとって使いやすい。そして実際、この10年でそれが実行されてきた結果が今回のデータです。
問題は、多くの職員がこの変化に気づいていないことです。
30代・40代の方が「退職金2,000万円以上もらえる」と思って老後設計をしているとしたら、それは10〜15年前の数字を前提にしている可能性があります。自分が勤める自治体の最新の退職手当条例を確認した人は、どれだけいるでしょうか。
さゆり私が財政課にいたとき、退職手当の改定は「人事課から突然連絡がくる」という形で知らされました。査定の俎上に乗ってからは早い。職員への周知は後回しになりがちで、「知らなかった」という声をあとから何度も聞きました。自分の退職金は、自分で調べるしかないんです。
退職金2,218万円で、老後は本当に足りるか
仮に退職金が2,218万円(全国平均)もらえるとして、それで老後の生活費はまかなえるのでしょうか。
たとえば、老後の生活費が年金収入を月数万円上回るとすると、20年間の不足額は数百万円〜1,000万円超になることも珍しくありません(家庭の状況や自治体の共済年金水準によって異なります)。
退職金2,218万円は決して少ない金額ではありません。ただ、住宅ローンの残債、医療費、介護費、子どもへの援助——それらをすべてそこから出すとなると、「十分」とも言い切れない水準です。
さらに、勤め先の自治体の退職金が全国平均より低ければ、この試算はさらに厳しくなります。
📌 退職金だけでは足りない可能性がある人の特徴
- 勤務先自治体の退職金水準を確認したことがない
- iDeCo・NISAなどの資産形成をまだ始めていない
- 住宅ローンの完済が60歳以降になる見込み
- 配偶者のパート収入を含めた世帯年金額を試算したことがない
今から備えるために——FP相談という選択肢
「じゃあ何をすれば?」という問いに、一つの答えを出すのは難しい。家計の状況、勤め先の退職手当水準、年金見込み額、住宅ローンの残高——それらをひとまとめに見てくれるのが、ファイナンシャルプランナー(FP)との相談です。
公務員の方はお金の相談をする習慣があまりない、という印象があります。収入が安定しているゆえに、「何かを変えなきゃ」という切迫感が生まれにくいのかもしれません。でも今回のデータが示すのは、その安定の前提が少しずつ変わってきているということです。
動き出すのに「まだ早い」ということはありません。30代・40代の今こそ、老後設計を一度プロに見てもらうタイミングだと私は思っています。



退職金って、もらうまで正確な金額がわかりにくいにゃ。どこに相談したらいいかもわからないにゃ…。



そうなんです。だから私がお勧めしているのが、公務員の家計に詳しいFPへの無料相談です。退職金の試算だけでなく、年金・iDeCo・NISAを組み合わせた全体像を一緒に考えてくれます。まず「自分の数字」を把握することが、最初の一歩です。
退職金だけに頼らない老後設計を、プロと一緒に考える
「おかねと暮らしの相談窓口」は、家計・年金・資産運用をまとめて相談できるFP無料相談サービスです。地方公務員の方の相談実績も豊富です。
まとめ:退職金は「減るもの」として老後設計を立て直す
令和7年地方公務員給与実態調査が示したのは、退職金の「静かな縮小」です。10年で47都道府県すべてが減少し、最大で▲16.23%(和歌山県)の下落があった。民間よりまだ高い水準とはいえ、その優位性は年々薄まっています。
整理すると、この記事でお伝えしたかったことは3点です。
- 退職金は10年間で全都道府県が下落しており、今後も同傾向が続く可能性がある
- 2,218万円の全国平均でも、老後の不足分はゼロとは限らない——生活費・医療費・住宅ローン等を考慮すると、想定以上に手元が薄くなるケースがある
- 自分の自治体の数字を確認し、今から資産形成を始めることが、退職後のゆとりを作る最も確実な方法
「退職金があるから大丈夫」という安心感は、今や根拠が薄くなりつつあります。30代・40代のうちに一度、老後の数字を専門家と一緒に確認しておくことをお勧めします。
「自分の退職金、いくらになる?」をFPに相談してみる
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※本記事のライフプラン試算(生活費・不足額等)はあくまで一般的な前提に基づく概算です。実際の状況は個人によって異なります。詳しくはFP等の専門家にご相談ください。
※退職金の数値は総務省「地方公務員給与実態調査」における全職種平均の定年退職者データです(一般行政職・教育職・警察職等を含む)。職種や勤続年数によって実際の支給額は異なります。








