
数年前、ある部署から出た土木職の増員要求を、私は「今年は見送り」と判断したことがある。既存の人数でも回っている、他の部署との優先順位を考えれば妥当だ――そう説明した記憶がある。
その判断自体が間違っていたとは、今でも思わない。ただ、あのときの「回っている」は、応募者がいくらでも来る前提の上に立った話だった。今、その前提そのものが崩れかけていると知って、少し落ち着かない気持ちになっている。
採用試験の倍率、過去30年で最低に
総務省の調査によると、2024年度に全国の都道府県・政令市・市町村が実施した地方公務員(教員を除く)採用試験の競争率は、全体で4.1倍。前年度の4.6倍を下回り、過去30年間でもっとも低い水準になったという。
中でも深刻なのが技術職だ。兵庫県芦屋市の例では、2016年度に15倍だった土木職の採用倍率が、2025年度には3倍まで落ち込み、建築職も6倍から2倍を下回る水準になったと報じられている。応募者数自体が一桁台にとどまる年もあるそうだ(出典:神戸新聞NEXT)。
ねこにゃ〜、応募が一桁って、うちの部署の会議室の椅子より少ないにゃ……
採用枠を確保しても、座る人がいない
財政課にいた頃、私は毎年のように「増員要求」を突き返す側だった。人件費は自治体財政の中でも大きな割合を占める。だから「本当に必要な人数か」を厳しく査定するのが、私の仕事だった。
でも今、現場で起きているのは、査定して枠を確保しても、そこに座る人が来ないという、少し違う種類の欠員だ。ある自治体の担当者は「民間の待遇向上で転職する人もいる。今いる人材の確保も難しい」と危機感を語っていたという(神戸新聞NEXT)。現場では欠員が埋まらないまま、残業や業務の見直しでしのいでいるそうだ。
人事院勧告のたびに給与水準が話題になるが、そもそも「人が来なければ」その先の話は始まらない。このあたりの構造は、以前まとめた記事とも重なる部分がある。


「技術職だけの話」ではない気がしている
ここまで読んで、「うちは事務系だから関係ない」と思った方もいるかもしれない。今回特に問題として表れているのは技術職だが、民間企業との人材獲得競争という構造そのものは、事務職にも無関係ではないと私は感じている。
手取りが増えない、という実感を持っている方なら、なおさらだ。


事務系だから安泰、というわけではないと思う。今すぐ転職するかどうかは別として、今の自分の経験やスキルが外の市場でどう評価されるのか、一度冷静に確認しておく価値はあるのではないか。
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引き止める側も、手をこまねいてはいない
一方で、引き止める側の自治体も動き出している。神戸市と周辺8市町は今年4月、自治体で働く魅力を発信する共同PRサイトを立ち上げた。住宅地の無電柱化や税務のDX化を担当した職員へのインタビューなど、公務員志望者以外にも読みやすい内容で「働く魅力」を伝えようとしているという(神戸新聞NEXT)。
査定する側だった私からすると、こういう発信に予算がつくようになったこと自体、時代の変化を感じる。



にゃ〜、うちの自治体もPRサイトつくればいいのにゃ。……あ、でも「深夜まで残業してます」って書いたら逆効果にゃ。
まとめ
あの増員要求を見送った判断が正しかったかどうか、今となっては誰にも分からない。ただ、当時「当たり前」だと思っていた前提が、今はもう当たり前じゃなくなっているのは確かだと思う。
だからこそ、査定する側だった人間として言えるのは、前提が変わったときに一番怖いのは、変わったことに気づかないまま、同じ判断を繰り返すことだ。自分の立ち位置を、一度ちゃんと確認しておくことだと思う。
※本記事のデータは神戸新聞NEXT「公務員の志望者減が深刻化 県内自治体で採用強化の動き 9市町が共同PRサイトも」を参考にしています。








